札幌から行く 『温泉宿』

    温泉宿 「宿泊」 好きな札幌人。風呂、食事、部屋、もてなし・・・ 「湯宿をめぐる冒険記」 & 「雑多な温泉話」

    2食5,000円 真相は

     針葉樹が生い茂る鹿児島県北西部の山奥。JR出水駅から車で15分のずんどまりに、白木川内温泉が湯けむりを上げる。白木川内温泉山荘と旭屋旅館の2つの温泉宿が共同利用している岩風呂は、九州八十八湯めぐり(JR九州主催)に登録されている名湯だ。
     それにしても、旭屋旅館は2食付5,000円ポッキリ。なんて激安なのでしょう。「きっとなにか裏があるはず。この目で真相を確かめたい」と、ドキドキ気分でチョイスした。

    旭屋旅館までの道程は、木々が生い茂る
     13時30分過ぎに訪れると、もじゃもじゃ髪の若旦那が開口一番、こう叫ぶ。
     「えーっ、もう来ちゃったんですか!」。目を白黒させながら、うろたえている。
     「予約した楽天トラベルはチェックイン12時からOKで、ワタシは13時で申し込みましたが」
     若旦那はもじゃもじゃ髪を掻き毟りながら、壁にピン止めしていた予約表に目をやる。
     「ホントだあ。でも、ウチは16時からなんですよ。前にもあったなあ、なんでかな」
     「それは(楽天トラベルに)直してもらった方がイイですよ。出直しましょうか」
     「いやいやいやいや、とんでもない。ちょちょちょちょっと待っててね。5分、いや10分」
     そう言うなり、雑巾を片手に2階へ駆け上がっていった。
     一連の対応は嫌味な感じが一切しない。本当にびっくりしている様子だ。



    漂う生活臭

    とっ散らかった玄関周り
    ねこはメンコイ
     ぽつねんとして1人佇みながら、経年劣化した木造モルタル風情の玄関回りを改めて見渡すと、パイプ椅子、ポリタンク、ペットボトル、雑誌などが散らかっていて、生活臭が漂う。
     「ニャー」と猫があいさつにやってきたので、近づくと逃げていった。日帰り入浴を終えた地元民っぽいおじさまと目が合い、互いに会釈する。
     10分経たぬうちに「どうもどうも、支度が出来ましたよ。さあ、どうぞ」。ニッコリ笑顔の若旦那に、今宵の客室まで案内された。

    客室ドアを開ける
     通された客室の障子が少し破れており、障子戸の木枠は「猫が爪とぎしちゃって」(若旦那)と、ささくれ立っている。真夏なのでエアコンがあるのはありがたいものの、冷風がいささかカビ臭い。窓を開けると網戸がないから虫が入ってくる。これは客室にこもっている場合ではないと、自慢の風呂へ向かう。その前にトイレを覗くと、男女共同で「大」の方は汲み取り式だった。いわゆる「ポットン便所」が懐かしい。



    足元自噴の単純硫黄泉

    足元自噴
     浴室は一度玄関を出て、階段を下りた先に、2か所(それぞれ男女別)がある。どちらも狭くて家族風呂のよう。旭屋旅館併設の男性岩風呂は、窓から光が差し込み、岩の割れ目から足元自噴を楽しめる。単純硫黄泉の澄んだ湯は、こざっぱりしていて、口に含むとほのかに硫化水素の味わい。心なしか肌もスベスベした。一方、白木川内温泉山荘の玄関前の男性浴室は、昼間でも真っ暗で穴倉っぽい風情だった。


    山荘とは兄弟ではないです
     浴室を共同利用している2つの温泉宿の関係性について「山荘とは兄弟ではないです」とだけ、玄関前に放置された椅子の背もたれにマジック書きの上、アピールしていた。若旦那は親の跡を継ぎ、こちらの温泉宿を経営しているという。

     入浴を終えて玄関に戻ると、管理人室のドアを開けっ放しにして、若旦那がTシャツとハーフパンツ姿で床にゴロリとなり、扇風機の風に当たりながらスヤスヤ眠っていた。穏やかな寝顔に、夏の日の午後を感じる。ニッポンは平和だなって。



    手作りな食事

    若旦那が愛飲する缶ビールは「プレミアムモルツ」だった
    朝食はこれくらいがちょうどイイ
     この分じゃ、夕食はアレだなあと思っていたら、意外や意外。品数こそ定食風情ながら、鹿児島名物「きびなごの刺身」を酢味噌で食し、さば焼き、マカロニサラダ、煮物も既製品じゃない。手作りだ。客室へお膳を運んできた若旦那に「すごいですね、美味しそう。ご自分で作るんですか」と聞けば、「いやいや、ほとんどもらいものです」だそう。いま思えば、どこからもらってくるのだろうか。

     宿にソフトドリンクの自販機しかないので、ビールを頼むと、アルコールは用意していないそうで、若旦那が晩酌するビールを特別に1本、実費で譲ってもらった。飲み干してもう1本頼むと「スミマセン、もうストックないんです」と。飲み過ぎずに済んだ。缶ビールと一緒に差し出されたコップが陶器だったのが心に残る。朝食も悪くない。




    オトコの1人旅に

     2食5,000円、日帰り入浴料150円。これっぽっちも儲けようと考えていない姿勢が美しいと思う。しかし、片付け下手な館内をはじめ、ハード面を考慮すれば妥当な値段設定かも知れない。オトコの1人旅にふさわしい温泉宿と言えそう。

    陰鬱な看板
     この日の宿泊客はワタシ1人。対するスタッフも、もじゃもじゃ髪の若旦那1人だけで、温和な笑顔で腰も低く、チェックイン時のドタバタ劇にちょっぴりドジな一面ものぞかせた。なんだか素朴で憎めない。鹿児島の山奥のずんどまり温泉宿で、ゴーイングマイウェイな湯守り生活を送っているヒッピー(既成の価値観に縛られた人間生活を否定する自由人)に見えてきて、なんともウラヤマシイ。JR出水駅から往復タクシーで7,000円余を使ってしまった(宿泊代以上・・・)ものの、「イロイロな温泉宿があるんだなあ」と勉強できたのが、何よりの収穫だ。

    チェックインは12時から
     あれから、1年8ヵ月。楽天トラベルでは、相変わらずチェックイン12時00分~と記してある。南国の鹿児島に住む若旦那は、大らかな人柄なのだろう。思わず、ニヤリとした。

    いっち様

    貴重なレポ、ありがとうございます。
    間接的な情報では今一つコチラの全体像がイメージできなかったのですが、今回大変勉強になりました。
    旭屋旅館の謎が解明に向け大きく前進したように思いますww。

    2014.04.15 23:33 URL | 駅前旅館 #.vjKhiP6 [ 編集 ]

    駅前旅館さんへ

    こんばんはです!
    いま思うと、いろいろ謎めいた温泉宿でした(笑顔)
    好事家以外の女性を連れて泊まるのはキビシイと思いますので、
    やっぱりオトコ旅にオススメかも知れません~
    ぜひ、駅前旅館さんの突撃で宿の真相を明らかにしていただきたいです(笑顔)

    2014.04.17 23:15 URL | いっち #- [ 編集 ]












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